本書は建築家ウィリアム・スマリーの作品を、彼にインスピレーションを与えた空間とともに紹介する。本を読んだり、音楽を聴いたり、歩いたり、ただその中にいるだけでも落ち着ける空間、つまり、私的な瞑想の場は、安息と平和の希有な感覚を実現する空間である。

自身のブルームズベリー・アパートメントやイギリス、フランス、ニューヨークのプロジェクトに加え、パラディオによる16世紀のヴィラ、メキシコとスリランカの住宅、スイスの巨匠建築家ピーター・ツムソーによるデヴォンの世俗的な隠れ家など、本書は他の建築家の作品にもは広がっている。またコーンウォールのバーバラ・ヘップワースの庭とスタジオのシンプルさ、ケンブリッジのケトルズ・ヤード・ギャラリーの親密さなどアートを作ったり展示したりする場所も紹介している。

写真家ハリー・クラウダーに特別依頼した写真群は、空間の雰囲気を伝えている。高名な陶芸家であり作家でもあるエドモンド・デ・ワールによる序文には、私たちが建物とどのように関わり、それらが私たちにとってどのような意味を持つようになるのか、その小細かな、言葉にはされない方法が記されている。