本書は、20世紀建築史において「主流」とされるモダニズムとは異なる、もう一つの潮流を掘り起こす重要な学術書。

建築評論家・歴史家として知られるケネス・フランプトンが、長年の研究を集大成としてまとめた一冊で、一般に知られる「インターナショナル・スタイル」とは異なるモダニズムの系譜、つまり地域性・構築性・人間性を重視した「もうひとつの近代建築運動（The Other Modern Movement）」を探求している。

ここでいう「もうひとつの近代建築運動」とは、一般的なモダニズム（ル・コルビュジエ、ミース・ファン・デル・ローエ、ヴァルター・グロピウス）に対して、地域性と自然素材の調和を追求したアルヴァ・アアルト、合理主義の中に詩的要素を持ち込んだジュゼッペ・テラーニ、ネオクラシシズムとモダンの融合を実現した「北欧モダンの父」グンナール・アスプルンド、ブラジリア都市計画者としてよく知られるルシオ･コスタなどの建築家や潮流を対象にしている。

「モダニズムは冷たく、非人間的である」というステレオタイプに対して、もうひとつの温かく詩的なモダニズム像を提示。
また、近代建築を一元的に捉えがちな教育や評論に対するオルタナティブな一冊であり、ヨーロッパ以外（ラテンアメリカ、北欧など）の文脈に光を当てている点が、グローバルな視点からも再評価されている。

Yale / 344ページ / ハードカバー / 241 × 191 mm / 9780300238891 / 2022年