美しくデザインされた本書はエルズワース・ケリーの写真のみに焦点をあてた初の美術館展となった写真作品を収録。サンタバーバラ美術館がケリー作品のあまり知られていない側面を紹介している。

ケリーは1940年代後半から、身の回りにある様々な視覚現象を題材に、時代を象徴する抽象芸術作品を制作した。ケリーの写真は、その発見を、しばしば印象的な陽光と影が反響する自然や建築物を緊密な構図で記録している。

一見似ているように見えるが、ケリーは写真をもとに絵画や彫刻、紙作品を制作したわけではない。ケリーにとってカメラは、自分の生活環境を見事に芸術へと転写するための、もうひとつの芸術的道具であり、抽象的ではあっても、現実の日常世界における彼の主観的体験と常に共鳴していた。

エルズワース・ケリーをよく知る人にとっても、初めて知る人にとっても、これらの写真は、本人がこれまでに手がけたどのジャンルとも異なっている。本書は、革新的なアーティストであるエルズワース・ケリーの眼差しと心の動きを鮮やかに直視する機会を与えてくれる。

DelMonico Books / 160ページ / ハードカバー / 310 x 254 mm / 9781636811246 / 2024年