UNCRATING THE JAPANESE HOUSE
日本のモダニズム建築を代表する建築家、吉村順三によって1954年に「ニューヨーク近代美術館(MoMA)で開催された展覧会の一環として建てられた日本家屋と庭園「松風荘」、建築家、アントニン・レーモンド(Antonin Raymond)による ペンシルバニア州ニューホープに位置する「レーモンド農園」、日系アメリカ人家具デザイナー、ジョージ・ナカシマ(George Nakashima)による「ナカシマ・スタジオ」という3つの建築物に焦点を当てた作品集。本書は、「松風荘」で開催された展覧会にあわせて刊行された。
「松風荘」は、1953年に施工を務めた宮大工棟梁、第十一代伊藤平左エ門の名古屋にある作業場で仮組み立てを行った後に解体され、1954年に「MoMA」の展示のために輸送され、展覧会終了後にフィラデルフィアにあるフェアマウント公園に移築された。「MoMA」の「 House in the Museum Garden」展のキュレーターは、歴史的な日本建築とモダン建築の融合、つまり柱と梁の構造の明快さ、用途の柔軟性、屋内と屋外の空間の密接な関係などを強調した。
本書は、吉村が設計した「松風荘」と、ペンシルバニア州バックス郡ニューホープにあるアントニンとノエミ・レーモンド(Noémi Raymond)夫婦が18世紀のクエーカー教徒の農家を改造して建てた「レーモンド農園」と、ジョージ・ナカシマが家具製造業と自邸を併せて30年間(1947-77年)かけて設計した「ナカシマ・スタジオ」の2つの隣接した建築物を中心に、豊富な図版を通して紹介する。それぞれの敷地には、建築家とデザイナー集団の個人的な関係や異文化間のコラボレーションが具現化されている。
レーモンド夫妻は、吉村やナカシマらとともに、建築することや、共同作業や旅を通じて、変化する日本の環境を理解するようになった。そして、これらの教訓を、日米両国の現代の暮らしの家具や造作に展開したのである。
本書は、「松風荘」で開催された展覧会で展示されたオブジェとエフェメラを記録した一冊。ニューヨーク在住の建築写真家エリザベス・フェリセラ(Elizabeth Felicella)が、それぞれの建築物を撮り下ろした新たな写真で捉えている。アメリカ人学者のケン・タダシ・オオシマ(Ken Tadashi Oshima)とウィリアム・ウィテカー(William Whitaker)によるエッセイが掲載されているほか、歴史的写真、家族のスナップ写真、建築図面が、近代建築とデザインの歴史におけるこの重要な章をさらに解明している。
(ディストリビューターのテキストより)
AUGUST EDITIONS / 144ページ / ハードカバー / 244 x 246 mm / 9781947359093 / 2022年