Sloftはフランス、パリをベースにした、都市に住むコンパクトなインテリアとライフスタイルを紹介するメディア。
5年前にデジタルプラットフォームでスタートし、その後紙の雑誌として創刊された。
本書はsloft magazineの第8号。
8組の個性あふれる住まいを訪ねて
東京、マドリード、パリ——都市の景観が均質化していくなかで、個々の住空間はその土地ならではの個性を鮮やかに示している。いま、不動産としての流通性を重視した「金融化された建築」が建物の個性を消し、場所の特性を希薄にしている。たとえ象徴的な大型プロジェクトが時折出現しても、それだけでは失われた輪郭を取り戻すことはできない。
そのような外的混乱への処方箋は、内的な世界の創造にあるのかもしれない。たとえば、デザイナーのピア・シュヴァリエのアパートに見られる、大胆な素材や色、柄の組み合わせ。あるいは、マドリードのエドゥアルド・メディエロの住まいが示す、徹底された機能美。
初の“ファッション・エッセイ”:文芸とファッションの融合
都市の輪郭がぼやけていく時代において、もう一つの鍵となるのが「スケール」の概念である。巨大化が重視されるいま、街や建物、避暑地さえも、一度に全体像を捉えるのは困難だ。本当にその場所を知るには、何度も足を運び、記憶をたぐり寄せるしかない。結局のところ、私たちが覚えているのは、感覚や印象の断片にすぎない。大きすぎる住まいは人の気配を離れた瞬間、独立して静かに生き続ける——そんな体験を、ユリス・ジョスランが綴る。
アーティスト・デュオ「Xolo Cuintle」へのインタビュー
私たちが去ったあとに残るのは、結局「場」そのものである。その空間は、私たちを受け入れずに閉ざす存在でもあるのか? ロミー・テクシエとヴァランタン・ヴィエ・ビネによるアートデュオ「Xolo Cuintle」は、コンクリートという素材を、自然と人間のあいだに立ちはだかる“壁”と捉える。無機質で環境を管理するこの素材に対し、彼らはその原点を探り、有機的なものを取り戻そうと試みる。それは、建築と人間を再びつなぎ直すような、詩的で魅力的な試みである。![]()
Sloft / ソフトカバー / 240 x 168 mm / 9782958076276 / 2025年